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事業承継対策における種類株式活用のメリットデメリット!導入には早めの検討が重要!

1. はじめに

近年、事業承継対策として活用されている種類株式は、議決権に制限を加えたり、株主によって配当や残余財産の分配方法を変えたり、適時株式の集約等を行うことができるよう設定できるため、種類株式の導入により、自社の状況や経営者の意思を反映した事業承継が可能です。

今回は、種類株式の概要と事業承継対策における活用方法をご説明します。

2. 種類株式の概要

種類株式は、定款に定めた権利内容の異なる2種類以上の株式を発行する場合の各株式をいいます。具体的には、下記に列挙した内容の株式をいいます。会社法上は、各権利内容を組み合わせる形での発行も可能です。

種類株式名定款に定める権利の内容
配当優先(劣後)種類株式剰余金の配当の範囲
残余財産分配優先(劣後)種類株式残余財産の分配の範囲
議決権制限株式(無議決権株式)議決権を行使することができる事項の制限
譲渡制限株式株式の譲渡制限
取得請求権付株式株主から会社への取得請求権の行使
取得条項付株式会社から株主への取得請求権の行使
全部取得条項付種類株式株主総会特別決議による当該株式全部の強制取得
拒否権付種類株式(黄金株)株主総会決議事項等に関する拒否権
役員選解任権付種類株式種類株主総会での取締役等の選解任

3. 種類株式の主な活用方法

■ 議決権制限株式

後継者に自社株式を承継する際に、承継後の議決権総数が過半数を下回ると、株主総会の決議ができずに会社経営に支障が出てしまう可能性があります。そこで安定的な会社経営を目指すのであれば、後継者の議決権総数が50%超となるように、他の株主が保有する株式を無議決権株式とする方法が考えられます。

この方法を採用するにあたっては、他の株主からすれば自分の議決権がなくなってしまうという不利益を被ることになるため、無議決権化することと引き換えに、通常の株式よりも多く配当することを約束する配当優先付無議決権株式とすることで、他の株主への説明がしやすくなり、同意も得られやすいのではないかと考えられます。

ただし、将来的に業績が悪化した場合の配当財源の問題や、無議決権株主であっても、株主代表訴訟を提起することは可能という点で、注意が必要です。

■ 取得条項付株式

株主に相続等が発生した場合に、何も策を弄さなければ順次下の世代に株式が分散していってしまい、経営に関与しない相続人が株式を取得することにより、安定的な会社経営に支障を来たす可能性があります。特に社歴の長い会社にはよくある話で、何世代にもわたって相続を繰り返した結果、まったく顔もしらない親族が株主になっていたりすることがあります。

このような場合の対策として、既存株主の死亡や退職などにより会社経営に関与しなくなったタイミングを契機として株式を買い取ることが出来る取得条項を付けることができます。このような取得条項付株式を活用することで株式の分散を防ぐことができます。

取得の対価としては、普通株式や他の種類株式、株式等以外の財産を交付することができます。また、取得対価の額も定款で定めることができます。

ただし、現経営者が亡くなった際に、他の株主からの買取請求により会社経営を乗っ取られてしまう、いわゆる相続クーデターのリスクがありますので、注意が必要です。さらに買取には分配可能額による財源規制を受けます。

■ 拒否権付種類株式(黄金株)

現経営者が早期に株式を移転して、後継者へ事業承継を行う場合、現経営者の株式の議決権による支配が著しく低下します。しかし、現経営者が拒否権付種類株式を保有していると、実質的な会社支配権を留保することが可能です。

これにより、後継者の経営判断に相当程度関与を強めておくことができ、敵対的買収や経営者以外の株主が保有する株式の第三者への売却を防止することができます。

ただし、拒否権付種類株式の保有者が死亡した場合や意思能力を欠くこととなった場合等には、経営の遂行が滞る恐れがありますので、取得条項付株式と併用されることが多いといえます。また事業承継税制の適用を考えている場合には、その適用関係についてはよく注意が必要です。

4. まとめ

以上のように、種類株式は事業承継に有用なものではありますが、その導入には、全株主からの同意を得る必要があるため、株主数が多く、既に関係性の薄い株主がいるような場合には、同意を得るまでにかなりの時間を要することを想定して、中長期的な目線で早期の検討が重要です。

さらに種類株式の税務上の評価は、その取扱いが明確に示されているわけではないため、株式転換時における思わぬ課税リスクがないか、よく検討が必要です。

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