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認知症になると相続対策が困難に?!知っておきたい財産管理について、わかりやすく解説!

1. はじめに

2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されており、誰しもが将来、認知症になる可能性があるといえます。高齢社会の日本では認知症に向けた取組が今後ますます重要になると考えられます。

そのうちの一つとして、財産管理が挙げられます。認知症を発症し、判断能力がなくなると、遺言書の作成、不動産の売買、子や孫への贈与などの法律行為が出来なくなり、相続対策が困難になります。

今回は、将来の認知症対策に備えて、身上監護や財産管理を目的とする成年後見制度と家族信託について解説します。

2. 成年後見制度

成年後見制度とは、判断能力が十分でない方の主に身上監護を目的とする制度で、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後継制度」があります。

■ 法定後見制度

法定後見制度とは、判断能力が全くない利用者に対して、家庭裁判所が本人を援助する人として、後見人を選任する制度です。多くの場合、弁護士や司法書士などの専門家が選任されます。

被後見人の財産の保護を目的として、本人に代わり、契約の締結・取り消し、財産管理等ができ、日常生活を幅広く支援できます。一方で、法定後見人は「被後見人の財産保護」を目的とするため、財産をリスクにさらすこと(投資等) 、被後見人以外のために財産を使うこと(お孫さんへのおこづかい等)、生前贈与などの相続対策等ができなくなるという面で不自由が生じることや、管理する財産額等により月数万円程度の費用負担が生じること、また、法定後見人の交代は原則できないこと等の制約もあるため留意が必要です。

■ 任意後見制度

任意後見とは、利用者の判断能力が十分にあるうちに、任意後見契約を結び、将来判断能力が不十分になった場合に、任意後見人が被後見人を援助する制度です。利用者が後見人を決定することができるため、親族など、自分の信頼できる人を将来の後見人に設定することが可能です。

また、具体的な支援の内容や、後見人に対する報酬を公正証書で作成した契約書に定めるため、本人の意思を反映した財産管理を行うことができます。なお、法定後見人と異なり、本人が不利な契約を締結してしまった場合でも、任意後見人に契約取り消しの権限はありません。また、後見人の業務をチェックする任意後見監督人が家庭裁判所により選任されるため、任意後見監督人に対する報酬が別途発生します。

3. 家族信託

家族信託とは、読んで字の如く、家族などの親族に対して自分の財産を信じて託すことをいいます。例えば、所有する賃貸マンション等を信託財産として、委託者を本人、受託者を息子、受益者を本人とする家族間での信託契約を締結します。これにより家族信託として、財産管理が可能となります。

この場合、民法上の信託財産の所有者は、息子(受託者)となり、信託財産にかかる契約は息子が行うことができます。一方で、税務上の信託財産の所有者は、実質的な所有者である本人のままとなるため、信託財産から生じる収益費用は、本人である委託者兼受益者に帰属することとなり、信託の効力発生時には贈与税はかかりません。

本人の判断能力が低下する前に、本人の意思を反映できるように財産の管理・処分方法を盛り込んだ信託契約を締結することで、その信託財産の管理について、本人の意思を反映することが可能です。また、受託者に対しての報酬についても、あらかじめ契約書に定めておくことができます。

ただし、不動産を信託した場合の留意点として、不動産所得が赤字になったとしても他の所得との損益通算が出来なくなるため注意が必要です(租税特別措置法第41条の4の2①)。

4. まとめ

成年後見制度と信託をセットで活用することにより、身上監護は娘さんに、財産管理は息子さんに依頼するなどということも可能です。老後に備え、万一の時にも、自分の意思に沿った財産管理が行われるよう、これらの制度を活用するなど、早めに対策を検討することが重要です。

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