保有株式が株式公開買付(以下、TOB)を受けているが、上場廃止前後に売却する場合のそれぞれの課税関係を踏まえ、税務上どのタイミングで売却するのがよいか教えてください。
回答
上場廃止前に公開買付に応じて売却した場合には、上場株式としての課税関係になりますが、上場廃止後にスクイーズアウトにより強制的に売却した場合には、未上場株式としての課税関係になります。
一般的には、上場廃止前に上場株式として売却しておいた方が、課税処理の選択肢が多いため有利であると思われます。
解説
通常、子会社化目的でTOBが実施された場合には、公開買付者による株式の買い集めがある程度進んだ段階で、対象会社は上場廃止になります。また公開買付者の希望する株式数まで公開買付による応募がなかった場合に、公開買付に応募していない株主の対象会社株式を、スクイーズアウトとして株式売渡請求や株式併合などの方法により強制的に買い取ることがあります。
税務上、上場株式とは、文字通り証券市場に上場している株式のことをいいますので、上場廃止後には未上場株式としての課税関係になります。
未上場株式の売却損益は、他の未上場株式の売却損益としか通算ができず、損失を繰り越すといったこともできません。また未上場株式の配当との損益通算もできません。
一方、上場株式の売却損益は、他の上場株式の売却損益との通算はもとより、損失の3年間の繰越控除、上場株式の配当等の損益通算が可能です。
さらに上場株式であれば特定口座(源泉徴収あり)内で課税関係を処理することができるため、申告不要を選択することが可能ですが、未上場株式は特定口座内での運用ができず、上場廃止後に特定口座から一般口座に払い出されるため、生じた売却益は原則申告が必要です。売却益を申告した場合、自治体によっては、国民健康保険などの保険料が増加する可能性があります。
よって、TOBが実施された場合には、上場株式として取り扱われるTOB期間中に売却した方が、選択肢が多く、納税者にとって有利になるかと思われます。